相続した事故物件はどうすれば良い?諸経費や売却方法を解説


あなたが不動産会社の社員なら、悩みの種となるのは事故物件でしょう。
以前から事故物件の定義が曖昧であったため、売買契約でトラブルになりやすいといった問題がありました。
しかし、2021年10月に国土交通省から「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定され、事故物件の定義を明確に示しました。

ガイドラインでは、事故と見なされるのは、殺人や事故、火災などによる死亡であり、病死や老衰による死は事故にはならないといった内容が記載されています。
しかし、事件や事故以外の自然死は告知の必要はなくなったとはいえ、以前の物件に事故物件として取り扱われている場合もあるでしょう。

この記事では、事故物件を相続した方の悩みを解消するため、知っておくべき一般的な知識や事故物件の対応、売却に関する諸経費から売却方法まで解説します。
事故物件を相続するか迷っている方、不動産会社の方はぜひ、ご覧ください。

事故物件の相続税はどれくらいかかる?

相続税とは、故人から貰い受けた財産にかかる税金をいいます。

土地や建物などの物件を相続する際には、相続税を納めなければなりません。
相続した物件が通常物件ではなく、事故物件といった特殊な物件でも、同額の相続税が掛かかります。
しかし、物件を相続したからといって、必ず相続税を支払わなければならないわけではありません。
その理由は、定められた基礎控除額の算出額によって決まるからです。

相続税は、次の計算式で基礎控除額を算出します。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

法定相続人が1人では、3,600万円となり、3,600万円以下では相続税は掛かりませんが、3,600万円を越える場合、越える金額が相続税となります。
つまり、相続人が受け取る財産の額や相続する人数に応じて支払う額が異なるのです。

とくに不動産としてマイナスのイメージを持つ事故物件の相続税は、事故物件では通常物件に比べ、売却価格が下がる傾向にあるため、相続税が安くなります。

国税庁のホームページには、「事故物件など周辺宅地に比べて利用価値が低下している宅地は、10%程度、相続税評価を減額する」とあります。
つまり、事故物件の相続税は、通常の物件より減額され、負担は減ると考えていいでしょう。

事故物件を相続する際の対処法には何がある?

事故物件を相続する際には、今後のメリットやデメリットを理解したうえで、相続または相続放棄を検討しなければ、あとに後悔します。

では、どのような事故物件が相続するまたは放棄する判断材料になるのでしょうか。
ここでは、事故物件を相続する際の対処法を解説します。
相続するための判断基準を知っておくと、相続人となる遺族の方の精神的、経済的の負担を極力減らすためにできる内容ですので、次の2つの対処法を参考にしてください。

対処法①相続を放棄する

対処法②なるべく早く売却を行う

対処法①相続を放棄する

相続の対象となるものには、現金や動産、不動産関連の権利などのプラスの財産と借金や、ローン、未払いの税金などのマイナスの財産があります。
相続放棄すると、故人の財産のすべてを引き継がない代わりに、借金などの負債にも関わらずにいれます。

しかし、賃貸契約を結んでいた物件での事故となると、相続放棄によって、すべての責任が賃貸物件のオーナーに移り、迷惑をかけるかもしれません。
また、故人が有していた財産であっても、すべてが相続の対象ではありません。

相続対象にならないものとして、一身専属権、保険金・退職金・年金、祭祀財産の3つですので、留意しておきましょう。

対処法②なるべく早く売却を行う

事故物件の活用度が低い場合は、なるべく早く売却を行う方が良いでしょう。
理由としては、手持ちの資金では相続税が払えない、固定資産がかかる、空き家の管理が増える3つが考えられます。

とくに事故物件は、通常物件に比べ需要が低く、売却に時間がかかる可能性が高い傾向にあります。
将来的なリスクを回避するためにも、早めの売却で経済的負担を少なくするのが得策です。

また、どうせ売却するのであれば、なるべく高く買い取ってもらいたいという方が多いと思います。
下記記事では事故物件を高く売るポイントを紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

事故物件を高く売るには?押さえておきたい4つのポイント

相続した事故物件をなるべく早く売却するためのポイント

相続した事故物件の利用価値がないと判断すれば、なるべく早く売却しましょう。
事故物件は通常物件より買主が見つかりにくく、いつまでたっても売れ残るケースも少なくありません。

売却できない期間が長くなると、資産価値はますます下がり、建物の老朽化も激しくなり、買い手もつきません。
事故物件を売れやすくするには、売却するポイントを抑えなければなりません。

事故物件を売却しやすく、また、早く売却するためのポイントを6つ、紹介しましょう。

  1. 売却価格を低く設定する
  2. 事故物件を原状回復する
  3. 風評被害が収まるまで売却は控える
  4. 更地にしてから売却する
  5. 不動産業者に依頼する
  6. 訳あり物件専門の買取業者に依頼する

ポイント①売却価格を低く設定する

事故物件の売却価格を相場より下げて低く設定し、売り出すと、売却できる可能性が高くなります。

売却価格は、初めに不動産業者に査定を依頼し、通常物件と事故物件と2種類の査定額を確認しておきます。
ここで注意しておきたいのは、事故物件となった経緯による値引きを確認してから、事故物件の売却価格を設定しておく点です。

通常物件と比べて20%〜50%程度の値引きが必要です。

反対に売却価格を下げすぎると、購入希望者を不安にしますので、事故物件の原因に応じた売却価格に決めましょう。

ポイント②事故物件を原状回復する

事故物件をリフォームまたはハウスクリーニングするなど、原状回復してから売却する方法です。

室内などが事件や実個の影響により、壁や床など内装に汚れや破損が起きているケースもあります。
内装に痕跡が残れば、売却は困難になるため、可能な限り原状回復しておくと、通常物件に近い状態と判断され、売却しやすくなります。

ポイント③風評被害が収まるまで売却は控える

事故物件の風評被害が収まるまで待ってから、売却する方法です。

事故物件は人が亡くなっているといった悪いイメージが残り、売却価格が相場より低めに設定されてしまいます。
少しでも売却価格を高くするには、事故や事件から数年経過するまで待ちましょう。

風評被害が収まるまで待ってから売却すれば、悪いイメージは薄らぎ、買主も抵抗なく購入する可能性が高くなります。

ポイント④更地にしてから売却する

事故物件の建物を解体し、更地にしてから売却する方法です。

建物を解体すれば、人が亡くなった悪い印象がなく、買主も土地だけの購入となり、心理的負担が軽減します。
ただし、建物の解体費用は、相続人が負担しなければいけないので、注意が必要です。

なお、物件の築年数が浅い場合は土地とのセットで売却できる場合もあるので、解体の見積りを依頼する不動産会社に相談しておきましょう。

ポイント⑤不動産業者に依頼する

事故物件の取扱い実績が豊富で信頼のある不動産業者に依頼する方法です。
事故物件の売却は、通常物件に比べ、買主が見つかりにくい傾向があり、不動産業者にとっては難易度の高い物件です。

しかし、事故物件の取扱い実績が豊富な不動産業者であれば、売却に関してノウハウも豊富で、取扱いも熟知しています。
不動産業者の公式サイトから、事故物件の取扱実績の多い業者をいくつか検索、比較し、事前に相談の上、依頼しましょう。

ポイント⑥訳あり物件専門の買取業者に依頼する

不動産業者を介さず、訳あり物件専門の買取業者に依頼する方法です。

不動産業者は、仲介業者のため、売主である相続人の代わりに購入希望者である買主を探します。
しかし、マイナスのイメージが強い事故物件は、買主が見つかりにくく、契約までに至らない可能性もあるのです。

一方、訳あり物件専門の買取業者は、直接、物件を買取るため、買主を探す手間が省略でき、契約までスムーズに行えます。

訳あり物件のなかで事故物件に関する情報をお探しの方に向けて、以下の記事でも取り扱っています。
興味のある方はこちらも合わせてご覧ください

【関連記事】事故物件の定義とは?

【関連記事】事故物件を高く売るには?

【関連記事】相続した記事の対処法

【関連記事】事故物件の基礎情報

【関連記事】事故物件の基準

相続した物件の売却にかかる諸経費

相続した物件の売却にかかる諸経費は、事故物件でも通常物件の不動産売却と同様、諸経費が発生します。
不動産業者の仲介手数料をはじめとする7つの諸経費です。
売却価格から諸軽費を差し引いた金額が売却利益となりますが、諸軽費を忘れてしまうと思っていた以上の出費になりかねません。

相続した物件を売却する際に必要な諸経費を知るのは資金調達のために必要です。
諸経費を考えずに相続した物件を売却してから、最終的に手元にお金が残らない事態を避けるためにも、売却前に確認してください。

諸経費については以下にまとめておきます。

  • 仲介手数料
  • 相続登記費用
  • 解体費用
  • 不用品処分費
  • 遺品整理費
  • 土地測量費
  • 売買契約書用収入印紙代

各諸経費の詳細については、次のとおりです。

仲介手数料

不動産業者に相続した物件の売却を依頼し、売買契約が成立すれば、仲介手数料を支払わなければなりません。

仲介手数料は売却価格によって異なりますが、上限は宅地建物取引業法により決められています。

仲介手数料の上限の算出式は、売買価格×売買価格毎の割合(%)×消費税です。
売買価格毎の割合は、売買価格が200万円以下の場合は5%、200万円超400万円以下の場合は4%、400万円超の場合は3%となり、上記の算出式に当てはめ、必要な仲介手数料を求めます。

相続登記費用

相続した物件を売却するためには、相続登記が必要です。

登記は一般的に司法書士に手続きを依頼し、その報酬額を支払います。
司法書士への報酬額の相場は、7万円〜15万円ですが、加えて登録免許税などの実費が別途必要です。

解体費用

相続した土地、建物の内、老朽化が進んだ建物を取り壊し、土地だけの売却を考えている場合は、建物の解体費用が必要です。

建物が木造または鉄骨、プレハブなど材料によって費用は変わりますが、坪単価で計算するのが一般的です。

不用品処分費

土地、建物を売却する場合、建物内外の不用品を処分し、物件を綺麗な状態に戻してからの引渡しになります。

処分費は、処分業者が1㎥あたりの金額の見積りが一般的ですが、業者によってはトラックの台数での見積りもあります。

遺品処理費用

故人の遺品を相続人に代わり、形見分けや買取を整理し、残りの不用品は処分する遺品処理費用です。

費用は、遺品の量などで決まりますが、地域や処理する業者の人数でも異なります。

土地測量費

売却する土地は、隣地との境界線の確定と売却価格を決定するため、測量が必要です。

測量は、土地家屋調査士に依頼するため、土地の面積が広いほど、高くなります。
また売却予定の土地の周辺の状況によっても、費用は変わります。

売買契約書用収入印紙代

物件の売却は売主と買主が契約を結ぶ売買契約書に収入印紙を貼付します。

印紙代は、物件の売却にかかる印紙税です。
印紙代は売買金額によって税額が定められており、金額が高くなるほど、印紙税も高くなります。

相続した事故物件を売却する際の注意点

相続した事故物件を売却するには、少なからずリスクがあります。
通常の物件とは異なるため、早く売却したいと考えるのは仕方ありませんが、注意すべき点があります。

  1. 告知義務がある
  2. 売却価格は下がる
  3. 価格設定を下げても値引き交渉される

ここでは、事故物件を売却する際の注意点を3つ紹介しますので、参考にしてください。

注意点①告知義務がある

事件や事故があった物件を伝えずに売却し、あとに発覚した場合、心理的瑕疵が認められ、契約不適合になる可能性があります。

契約不適合になると、契約解除や損害賠償を請求される可能性もあるため、最も注意したい点です。
告知義務違反は、買主や不動産会社にも責任を及ぼす場合もあるため、大きなリスクを背負う前に告知義務を果たしておくのが賢明です。

注意点②売却価格は下がる

事故物件である以上、通常物件より価格が下がるのは仕方ありません。

売却価格は、相場より設定を下げて売り出せば、早目に売却できる可能性は高くなります。
また、売却に際しては、事故物件であるための価格設定だと説明も必要です。

注意点③価格設定を下げても値引き交渉される

売却価格を下げた設定で売り出ししても、更なる値引き交渉が入る可能性もあります。

その際は、原状回復している、他の競合物件との比較、周辺の利便性などをアピールする等、物件としての価値を見出しておくべきです。

事故物件の売却方法にはポイントを抑えることが大切!

事故物件を相続するにはさまざまなリスクがあります。

しかし、事故物件を手放さず放置しておくのは、相続人に対して、家の老朽化や空家問題、税金などの経済的な負担、周囲の目に対する精神的負担が重くのしかかります。

また、不動産会社によっては、売却を依頼されてもためらう場合もあるでしょう。
不動産会社としては、相続した事故物件は、相続人に取扱い実績のある不動産会社または訳あり物件専門の買取専門業者に早目に相談し、売却するようにしてください。

事故物件などの訳あり物件は、買主から敬遠される傾向にあり、相場より低い査定額で売買されてしまう可能性が高いです。

しかし、事故物件といった理由で安く売買されるのは、売主にとっては本望ではありません。
私たち「訳あり物件専門のラクウル」は、日本全国の事故物件などの訳あり物件を不動産業者を介さず売るため、事故物件の売買も高くスムーズになります。
事故物件の売却をご検討されている方は、不動産業者に依頼すると同時に、ご相談してもらえれば、査定額の違いがお分かりになります。

訳あり物件の概要は以下のページでも詳しく紹介しています。
訳あり物件について

訳あり物件買取の流れを知りたい方は以下のページも合わせてご覧ください
訳あり物件買取の流れ

以下の記事で、そのほかの訳あり物件に関する内容をまとめています。
訳あり物件をより詳しく理解されたい方はこちらも合わせてご覧ください。

【関連記事】訳あり物件を売却する方法

【関連記事】訳あり物件とは?